――夢を、夢を見ていた

いつだって夢を見る。何度だって夢を見る
それは、とても明るく、とても懐かしく、心地よく…普段感じられないようなモノを感じる

何故こんなモノを感じるのだろう?何故、それの時だけは感じられるのだろう

不思議と、コレが何かは知っているように思えた。何かはわからないけれども、
コノ湧き上がるものが何かを知っているはずだと思えた

コノ、心地悪いモノを含めて


けれども


夢は、いつだって同じように終わる

いつだって崩れ落ちる

どんなものでも、終わりがあるのだと示すように


だけど、だとしても

そうなのだと、しても


私/俺は――



いつも通りの朝が始まる

鍛錬して朝食を食べて、また鍛錬して
昼食食べて、また鍛錬して
時々任務に行って、帰って来て
夕飯を食べて、さっさと寝る

そして、また夢を見る

いつも通りの日々、いつも通りの毎日だね

変わったことといえば、最近師匠が影を抜けたということくらいかな?

師匠を追った人たちは帰ってこない…まあ、そういうこともあるよね

それくらいだ、いつもと違うことは

帰ってくる人もいるし、帰ってこない人もいる

いつも通り、なんてことはない…ボクの日常だ

「…お前は今の影を、どう思う?」

そう幼馴染に聞かれたことがある
特に何も思わず、別に?って答えたっけ
そうしたら、そうか…と返されたかな。何を聞きたかったんだろう?

「――お前は空だ。その身はあれどその中身に個としての欲望は無い」
「亡霊のような男だ。せめて人前では人らしく在るがよい」

そういえばそんなこと師匠に言われたっけ
幼馴染に答えるとき、ちゃんとそうできていたっけ?まあいっか
うーん、だけどこの“らしさ”は何を参考にしたっけ?…思い出せないや


まあ、いっか。別に困ることは無いし、困ったこともない
何か思うこともないし、思ったこともない


いつもどおり、生まれてから今まで変わったことは無い

――彼女に出会うまでは



その日はたまたま任務が中止になって、一日暇になっていた
特にすることもなく、ぶらぶらと散歩という名の時間つぶしをして
そうしていつも通り一日が終わる…いつもはそうだった

たまたま、たまたまだ

ふと師匠の言葉が、人らしくという言葉が頭をよぎって、
たまには別のところへ行ってみようと思って

普段のルートと外れて森の中へと入ってみたんだ

ただ、目的もなくぶらぶらと
意味もなくただ歩いて

…導かれるようにぶらぶらと
引き寄せられるようにただ、歩いて

…小屋が、見えた
なんでこんなところに小屋があるんだろう?とは思ったけど、
そういうこともあるかな、とも思った

なにかあるのかな?と近寄ってみて…ボクは出会う

「――人間か、珍しい…」

――今思えば、因果なのだろうと僕は思う

黄金色の、稲穂のような髪。九本の尾。首元の首輪。そして…その、虚ろな目

それを見たボクは…胸を深く刺す痛みを感じたんだ



「…里の者か…此処はお主のような者がいるべき場所ではあらん。帰るがよい」
「え、えーっと、べ、別にそんなことは無いかなって!」

帰ってはいけないと思った

「…まあ、よいがのう…」
「…そ、そうだ!お姉ちゃん名前は?」

一緒に居なきゃ、と思った

「…ラン。お主は?」
「ん、ボクはミナト!」

隣に居なきゃ、と思った


私/俺が、そうだったように。そう望んだように


僕は、僕が決めた通りに生きる その9→その10

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