宣戦布告をしたバーサーカー・・・グソクムシャが向かったのはその時唯一の戦場。
即ち、セイバー・フェリスとランサー・トゥーの下。

「ドーモ、セイバー=サン。ランサー=サン。
先ずは貴公ら二人からだ。・・・イヤー!」
戦略・戦術思考を封印されたバーサーカーに躊躇いは無い。
宝具の巨体を持って放たれるアクア=カラテが2騎を襲う。

『ッ・・・、疾い上、強度が高過ぎるな。
私の槍では殺し切れまい。・・・魔力切れまでの根比べか、』
ランサーはその敏捷を持ってバーサーカーの攻撃を紙一重で躱しつつ、冷静に判断を下す。
“自分では倒しきれない”と。
ランサーの槍は鋭く、振るう技は巧みであり・・・然し純粋に、宝具の巨体に対し、攻撃の規模が足りない。

『或いは、妖精さんのC・EXコールブランドでの一撃です、ね?』
それを覆しうるのは、此処にある中ではセイバー、フェリスの宝具のみ。
対戦艦級の斬撃を放つ溜めと直撃させる隙さえあれば、或いは。

故に剣舞を続けながら、二騎は隙を伺い続ける。
じりじりと削られ、傷を負い続けながらも。

「おお、アクア様!我がイクサを御照覧あれ!
・・・一発のスリケンで倒せぬなら、千発のスリケンを放つべし。
先ずは二騎。此の侭削り倒すのみ。」
バーサーカー、具足武者は高らかに己が神への祈りを謳い上げ、途絶えること無く攻撃を重ね続ける。
 焦る必要など無い。此の侭戦い続ければ、勝つのは己であるとの確信を持って。



教会に影が2つ。
一つは大樹、ルーラーのクロマツ。
一つは薄い幽体の少女、ルーラーに呼ばれ訪れたキャスター、ラケル。

「来てくれてありがとうございますラケルさん。
早速ですが、取引をお願いしたいと思いまして。」
『欲しいのは?』
「ラケルさんが封じている召喚陣と、貴女の一撃を。」
『対価は?』
「私の宝具を。」
『宝具と霊核、では無く?』
「ご勘弁を。・・・代わりに価値は二重です。宝具であり、空の聖杯を。」
『ま、ええか』
「ありがとうございます。では、よろしくおねがいしますね。
・・・宝具起動:“最終傑作”
私の精髄をもって、空の聖杯をもう一つ。」

端的な会話。端的な交渉。
クロマツは、ラケルがこの聖杯戦争に何を求めるか、大凡理解している。
ラケルは、クロマツが如何なる算段を立てているのか、完全に理解している。
故にたやすく契約は成され、クロマツが己が宝具を起動する。

クロマツは消え、代わりに残されたのは簡素な、然し宝具の力を秘めた木の杯が一つ。
ラケルはそれをひょいと取り、ついと持った手を彼女が居たビルへと向け、一言呟く。
ラケルが居た所・・・未だ呼ばれぬ最後の一騎が呼ばれるべき場所、ラケルが解析の為抑え込んでいた“召喚の陣”の下へと。

冬木式聖杯は、七騎を持って行われるもの。
解き放たれた最後の一騎は、流星の如く戦場へと飛んでゆく。

ルーラー:脱落



イクサの音が響く

震脚による、ビリビリという音が。
風を裂く打撃による、びゅうびゅうという音が。
剣と槍が大鎧とかち合う、ガキンガキンという音が。

「AaaaaaaQuuuuuuuAaaaaaaaa!」
 2騎を同時に相手して尚、優位なのはバーサーカー。
此の場に置いて彼を殺しうるのはセイバーの宝具、C・EXコールブランドの全力一閃のみ。
されど無論、グソクムシャは其のような隙を晒しはしない。
故に、このままでは二期とも削り殺されるのみ。

『疾ッ・・・・!』
・・・その天秤を傾けたのは、第三者の登場。
彗星一条。ライダーは飛び来る勢いの儘に、バーサーカーの顎をかち上げた。
『ライダーのサーヴァント、御劔此処に!出遅れましたが、混ぜて頂きましょう・・・!』

「ドーモ、ライダー=サン。小癪なアンブッシュを!
・・・グッ、これは!?」
 顎をかち上げ、そのまま飛び下がったライダーを目で追いながらも、
バーサーカーは体制を立て直さんとする。
 それを阻むのは彼の足元から生え育つ幾本ものイチイの木。
彼の足を、腕を絡めとり、封じる様に絡みつく。

『卿に生まれたようやくの隙、逃しはしない。
“嵐の王の名を持って命ずる。緑よ、繁茂せよ”』
 ランサーが振るったのは彼女の宝具、シャーウッドの森を在らしめる権能の一欠片。
“ランサーが通った場所”・・・これまでの攻防にてバーサーカーを翻弄するように駆け巡った足跡より、彼女の望む儘にイチイの木が生い茂り、バーサーカーを拘束する。

『Sequere naturam――』
隙を認識した瞬間。一切の躊躇いなくセイバーは全力の一閃の準備を開始する。
バーサーカーの胴を両断せんと、C・EXコールブランドに全力を注ぎこむ。

そして、介入者はもう一人。
・・・パン。と響いたのは彼方よりの銃声。
飛来した一発の炎の弾丸は、バーサーカーの片腕の拘束を焼ききった。
『これは・・・緋弾か!?』
ランサーは歯噛みするも、バーサーカーの両足と片腕、拘束の維持以上の余裕はない。

「ゴウランガ!
誰の援護かは知らぬが来るが良いセイバー=サン!腕一本はくれてやろうぞ!」
 バーサーカーは自由となった片腕を防御に回し、待ち受ける。
片腕は犠牲だ。腕一本と、或いは胴を浅く。それだけ斬らせ、“腕ごと”セイバーを潰すのみだと。

『バーサーカーさん、行きます、よ?
“C・EXコールブランド”!』
セイバーはチャージを終えた宝具をもって渾身の横切りを撃ち放つ。
裂帛の気合を持って、庇う腕ごと両断するのみだと。

 大鎧と大剣。2つの宝具の激突の結果は・・・



『“消滅”・・・これでよし。飲も。』ゴクゴク
バーサーカーの援護に放たれていた弾丸は“二発”
ルーラーとの約定に基づき、内一発を相殺したキャスターは、
木の杯にワインを注ぎゴクゴクと飲む。
最早ビルの屋上に居る理由も無し。バーサーカー達の戦いがよく見える空中に浮きながら。

『ん、相打ちか。』ゴクゴク
 それが二騎の衝突の結果であった。
セイバーの剣は、正しくバーサーカーを両断した。
だが、それでバーサーカーは止まらなかった。
・・・水を振るう機神の権能とアクア=カラテ。
それをもって両断され噴出するバーサーカーの血は刃となり、後の後の一撃としてセイバーを斬り伏せたのだ。

『解析終了。』
 ワインを飲みながら、クロマツが遺した宝具を解析し終えたキャスター。
其れも又採集し、倉庫へと。

『クロマツがくれれば楽だったんだが、しゃーない。
採取採取。』
 キャスター・・・ラケルの目的は聖杯戦争の勝利自体では無く、解析と採取。
この場所、召喚陣、サーヴァントの霊体、宝具、聖杯、・・・そして霊核。
故に宝具兼空の聖杯の解析・採取を終えた今、キャスターは最後の採取へと移る。

『よいしょっと。』
 即ち、自らの霊核。
胸に差し込まれた手が霊核に触れ“採取”された瞬間、キャスターはぱちんと消えた。

バーサーカー:脱落
セイバー:脱落
キャスター:脱落



『予想外、だな。』
『ええ。真逆ラケルさんが動くとはですねー。
両腕の拘束を焼き切れれていれば、グソクムシャさんももっと暴れてくれたでしょうに。』
『ライダーかランサーも倒して欲しかったのだがな。
・・・バーサーカーに落ちて欲しい者、クロマツ辺りの差金か。』
『そのクロマツさんと、当のラケルさんも直ぐに消滅したんですよね。
まあ、過ぎた事を考えても仕方ないです。現状を確認しましょうティラーさん。』
 緋弾の援護者であるアーチャー、ティラー&レアは語り合う。

『現状は七騎中四騎が脱落。
残るは私達とランサー・ライダーの三騎のみ。』
『それも、私達は何の消耗もなく。・・・つまり』

『『状況は極めて悪い。』』

『残ったのは機動力に優れた2クラス。それも一騎だけ消耗していないサーヴァントが居る、というのを共通認識として。』
『ですが、負ける気はありません。』
『勿論だ、レア。勝つぞ』
『ええ、勝ちましょうティラーさん。』

 残るは三騎。聖杯戦争は終盤戦へと。

続く?



おまけ:脱落者宝具紹介

・バーサーカー=グソクムシャ
 宝具:“水の魔導王・アクアビート”
 巨大ロボ。魔力をゴリゴリ削るが非常に強い。
今回は合一仕様であり、アクアビートのダメージ=バーサーカーのダメージとなっていた。

・セイバー=フェリス
 宝具;“C・EXコールブランド”
 大剣。前後に大きな隙が出来るが、対戦艦級の斬撃を撃てる。

・ルーラー=クロマツ
宝具:“最終傑作”
 宝具作成宝具。自分が消滅する代わりに、ある程度任意の機能を持った宝具を遺す。
樹人種族の自己加工能力を元とする、所謂逸話宝具。
 今回はルーラーとして与えられていた聖杯の情報を元に、聖杯のレプリカを作成した。

・キャスター=ラケル
宝具:“倉庫”
 仮想現実からデータを持ち帰るためのストレージ。
 ”聖杯戦争中の優位”の為では無く、そこからデータを現実に持ち帰る為という特殊な宝具。

このページへのコメント

今さらながら、乙です。出番ありがとうございます。
御劔もほぼ消耗無しだし、どうなるだろう?

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Posted by 御劔(ミツルギ) 2017年07月26日(水) 11:41:43 返信

外典お疲れ様です!
次々と落ちていくなぁ…狙撃手である以上動き回らずその場での狙撃を得意にしているから
残っているトゥーさんと御劒さんとの相性は割と最悪ではある。…いや、しようと思えば
動きながら撃てるとは思うけど。劇場版SAOのやつみたいに。いずれにせよここからどう動くか楽しみです!

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Posted by ティラー 2017年06月26日(月) 23:48:59 返信

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