島を歩いていて思う、兎、猪、熊、その他にも草食肉食入り交じったこの空間を、島という枠組みにしては大きい生態系は普通なのだろうか。
まぁこれ以上考えていても仕方がない、自分は専門家でもなければ、一兵士でしかないのだから。

特に終着点も決めずに思考しながら歩いていると、どこからか銃撃音と、直後に何かに弾かれる音が聞こえてくる。
森の近くの広場、鍛練でもよく使用される場所にて三人の青年達が集まって話しているようであった。

アステル「うーん……やっぱり、僕にはまだ早いかなぁ…」

シンシア『でも、アステル君…一回目からに比べると格段に当たるようになってますよ…………!』

アステル「あはは…うん、それは嬉しいんだけど、後はこれを安定して成功させなきゃ、実戦ではとてもしまゃないけど使えないからね。」

キャロル『銃と魔法石の同時取り回し運用…成功と言って良いのは四回目と六回目、八回目…位でしょうか。』

アステル「いや、四回目は手が滑って偶々上手くいっただけだからカウントしたくないなぁ。」

シンシア『もうちょっと自信を持っても良いと思いますけど…………』

キャロル『銃弾が当たる回数も増えて来てましたし、最後はシンシアさんも圧され気味でしたわよ?過度の謙虚は嫌みにもなりますし、素直に成果を喜んで良いと思いますわ。』

アステル「うーん、そうだよね……でもジークさんにはまだまだ通らなさそうだし、ラッドさんには当たらない気がするから…」

キャロル『その方達の名前を出すのはちょっと……』

見ていた限り、シンシアさんが盾役で防御に専念している所を如何に崩して行くか鍛練していたらしい。
アステル君が採った戦法は、銃で牽制しつつ、魔法石と魔法を使った一点突発を狙うといったもの。

アステル「うーん…もう少し威力を高めないとなんとも……」

確かに今の自分が受けたとしたら確実に避けていたであろう。
銃撃から魔法へ変える時の動きが単調、ラグが大きい、細かく言うならばまだあるが、まだまだ課題はある。
だが、考え方自体は間違えてないし、その向上心はとても良いことだ、それくらい傲慢でなければいけないことであろうと彼の肩を優しく叩きながら声を掛けた。

アステル「わひゃぁぁぁぁぁぁぁ!!??」

シンシア『ア、アステル君……!?』

キャロル(ビクッ!)

アステル「ラ、ラ、ラッドさん!?驚かせないでくださいよ!?」

単に後ろから声を掛けただけなのになぁ……

シンシア『あ……ラッドさん…こんにちは……!』

キャロル『びっくりしましたわ…こんには、ラッドさん。』

こんにちは、イマイチ驚かれる理由が分からないが…
気をとりなおして挨拶を返す。
アステル君とキャロルさんは魔法をジーク君に師事している、シンシアさんはそもそも自分と戦闘スタイルが違い過ぎる。
こちらから何かを指導することもないが、何か試したいことがあるならば付き合う旨を伝えておいた。

アステル「ありがとうございますラッドさん。その時はお願いしますね。」

今度奇襲しよ。

アステル「何時もなんで奇襲しようとするんです!?」

仕方ないね。

シンシア『モフモフ……しいたけ……』

キャロル『シンシアさん、落ち着いて、目がしいたけになってますわ』

シンシア『はっ……!』

こちらはこちらでトリップ起こしてる……


三人はまだ修練を続けるようだ。
別れた後、以前の自分の発言を思い出す。
"自分は以前あれだけ努力したことあったかな。"

そして、チガヤさんが呟いていた。
" …なんというか変わりましたよね。初期ならば絶好のパシリの機会と意気込んでいたような気がするのですが… "

当たり前と言えば当たり前である。

記憶を失い、兵士でパシリで皆の手伝いが好きなラッド

記憶が戻り、修練が嫌いで、興味が有るもの以外は無頓着な今の自分。

自らを"自分"と称して、人の助けに喜びを見いだすラッド。

自らを"俺"と称して、人の助けに何も見いだせない自分

ヒーローに憧れて救うためならば何にでも手を伸ばすラッド

ヒーローに成らなくては自分を許せる事が出来ずに手を伸ばす自分

どちらが正しいのか、どちらが間違っているのか、未だに回答は得ない。

どちらの自分にせよ、考え過ぎて沼に嵌まる所は変わっていないようだ。

たとえかつての家族達が牙を剥いてこようとも、自分は斬らないといけないのだろう。
それが自分が出来る供養でありケジメでもあるのだから。

こんなありふれた悲劇に酔っている場合ではない。
為すべき事を為すその時までは。


to be continued……

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

どなたでも編集できます