朝食も終わった、今日はどうしようかな。
特にないようだったら水路の清掃でもしようか……?

???「よぉ、今暇か?」

声をかけられ振り向くと、poisonエプロンを着けた師匠であった。
安藤竜、元は執事でありながら今は島の生活基盤を支える父親のような存在だ。

安藤「昼飯の仕込みが終わったら少し外で体動かさね?」

ふむ、珍しい……いや、当然かと思う。
ヒュドラの件から、後方支援だけではなく、毒針を使用した前線での動きを思案しているようであったし。
大丈夫だと返答して自分も仕込みを手伝おうかと打診しようとしたとき、厨房の方から声が聞こえてきた。

???「おい、いつまで片付けしてるんだ、さっさと仕込みに入るぞ。」

安藤「ん?あぁ悪い悪い、ちょっとラッドが居たから頼み事をな」

???「ラッド?お、今日は少し遅かったな、おはよう。」

厨房から出てくると、こちらを確認して挨拶をしてくれる。

安藤「そうそう。ジークもよかったらどうだ?このあと仕込みが終わったら少し鍛練でも」

ジーク、半竜であり皆を護る騎士である。
人間軽く凌駕する身体能力と剛剣には島の戦いで何時も頼りになっている。
アステル君を鍛えたり、自分とじゃれあったりで体を動かすことは嫌いじゃないはずだが、今回はタイミングが悪かったらしい、眉をひそめて

ジーク「悪い、この後イトネとマキにも呼ばれていてな、また今度付き合わせてくれ。」

安藤「あぁ大丈夫大丈夫、俺も思い付きで言ってみただけだし、そっちを優先してくれ。」

二人とも伴侶が出来て更に貫禄が出てきてるなぁと感じる、特にジーク君は最近料理等もするようになって、よく師匠やゴローさんとも夕食を作っているのを見かける。

ジーク「丁度いい、ラッドも仕込みを手伝ってくれ、手早く終わらせてしまおう。」

安藤「っと、そうだな、お喋りが過ぎたみたいだ、とっとと終わらせるか」

了解、と頷いて手洗いと消毒を済ませて中に入る。



一足先に行程を終わらせた自分とジーク君が厨房からでると、珍しい組み合わせが寛いでいた。

バルハル「…………」

ラケル『酒を飲もう』

一人は何かの本を読み、時たまコーヒーを口につける。
一人はどこから持ってきたのかひたすらゴクゴク酒を呑んでいる。

ジーク「……こんにちはだ同族、なに飲んでるんだ?」

ラケル『あぁ、こんにちは。ラッド酒を飲んでいる。飲むか?』

ジーク「い、いや、遠慮しておこう。何故ラッド酒?」

ラケル『仕方ないなぁ。許す』

ジーク「えぇ……」

まず、何故ラッド酒なのか返答してもらってないし、目の前で自分の型どった植物で作った酒を飲まれるのもなんとも言えない気分である。
ラケルさんだからで片付くのだが。

こちらはこちらでバルハルさんが何を読んでいるのか聞いてみるこのにしよう。

バルハル「ん?あぁ……こんにちは。今?今はこれを読んでいるよ」

見せてもらうと、そこには何も書いてない白紙の頁が続いている。
ん?何も書いてないのに何を見るというのだろうか……

バルハル「ふふ、視えていないか。まぁそうだろうな」

そう言うと彼は再び何も書かれていないはずの本に目を落とす、海でスヤスヤしながら漂っていたり不思議な人だと思うが、占星術を用いた?ビームを放ったり、その知識の高さで探索の補助もこなす凄い人である。

『暇だ、ラッドの雨を降らせよう』ペカー

やめてください。


師匠は鍛練の準備、ジーク君は姫様とマキさんの所へ、バルハルさんはまだ本を読むとの事でそのまま食堂、ラケルさんは気づいたら居ない。
自分も準備は既に終わっているので外で待っている事にした。


"もう!ラッドったら!私と雛苺が居なくてもしっかりしないとダメよ?"

"雷ー、その辺で許してあげてほしいのよー?ラッドも反省してるでしょ?ねー?"

"仕方ないわねー。雛苺がそう言うのなら……"

"でも雷、嫌そうな顔しないのよー?いつもラッドのお世話してるとき嬉しそう!"

"むぅ……だって体が動いちゃうんだもん!もっと頼ってほしいって…"

"うふふ、かわいーね!ラッドもそう思うでしょ?"


ふと思い出す、数は少なかった故郷の子供達、そのなかでも特に仲の良かった二人、のんびりしているようで思慮深い子、口煩いようで人一倍優しい心を持った頼りになる子。

年月が経っても忘れなれない自分を女々しく思いつつ息を吐き出していると、準備の終わったらしい師匠がこちらに向かってくる。
さて、自分も周りに置いていかれないよう精進せねば…行こう…


to be continued……

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