【R-18】シュテルとシュルクは遭難した島で貴方たちと生活するようです【安価・あんこ】

　その戦いは夜に起こる夜明けから始まった

戦う事も、逃げる事もできない者はいる

もう飛べなくなった老人、まだ未熟な子供、非戦闘員……
里を囲まれた状態であるが故の彼らの選択は「鷲の一族としては普通だった」

　眼鏡をかけた少女は朗々と唱える
「我らは神に告げる、我らは貴方達を認めない」
「我らが信じるは我らと共に滅びてくれる偉大なる翼の神である」
「我らはただでは死なず、滅びず……神が共にその存在を滅し、堕ちてくれるなら」
「冥府の底にだって共に堕ちよう……我らの翼の誇りと共に!!」

　敵は既に視認されていた、故にこの呪いは外れる事無く
地が割れる、空が明ける、音が無くなる……沢山の命と誇りを贄に呪いは思い出ごと世界を侵食する
彼らの許した奇跡以外を全て拒絶する
ソレが神々の受難の始まりである



　翼人は夜に飛べない、ソレは決まりきった事である
だからその裏をつく
飛べない時に攻撃しようと兵を動かすその初動を、呪法抉り、切り込む!!

「こいつぁ素敵だなぁ」
　翼人お得意の先頭が二枚盾を持った単縦陣で飛んでいく彼らを見降ろし、族長は唇を笑みで歪める
「使い捨ての護符……夜目だったか、いやこの数を用意してくれたベクターには感謝よな」

　翼人による夜襲、これはこれまでわざと一度も行わなかった
７年間「こうなる可能性を考慮に入れて」徹底的にやらないでしのいだ
何人の翼が空に散ろうとも、だ



　故にこの戦いは必勝、敵は気がつきようが無い

　必勝ゆえに必要なのはどれだけ、戦果をだすか?これ一つ
雑兵は討っても討っても意味がない
ならば狙うは……

　

「散開!!」
　戦闘の兵士が防ぎ、ソレが死ぬ寸前、もしくは突入目安距離まで加速次第散開
陣をばらして、ここが狙うべき獲物に襲い掛かるのが鷲の流儀
各個人が最高速度で浸透、ここまでくれば連携など無い
己が最速を信じ、彼らは光を纏って飛び駆ける

「標的発見!!」
　連携はない、ただし指揮は取られる
【風の声を使った管制指揮】
これらによって全体に情報は共有され……

　笑みを張り付かせ、族長は空中で抜刀の姿勢を取る
狙いは総大将、ネームドのどこかの主神様
陣形をぐずぐずにされて周りを叱咤する精神的支柱

　

　ソレを一足で叩き折る
羽ばたく、全力で加速する
視界の景色が後に流れる、音が遅れる
何もかもを置いてけぼりにし、壁を突き破り……事象さえも置き去りにして
【切り殺したという結果だけを押し付ける】
遅れてきた抜刀音と空に舞う神の首と……鮮血の噴水
「てめぇら!!殺せぇ!!」
殺戮が始まる



「我、嫁ノ飯と肌恋シ、斬リ死ヌ」
　その言葉と共に神に突っ込み、斬り果て、道連れにした男がいる

　彼らは退路を考えていなかった、全員が悉く死ぬつもりで各人魔力爆弾を懐に隠し持つ
この後、鷲の戦士は爆発すると言う噂が神陣営上層部に蔓延したほどだ

「腹ニ風穴ガ開イタ、涼シスギテ風邪ヲヒク前ニ家ニ戻ル……故郷ト共ニ果テルモ一興」
　死にかけた神を槍につき刺し、盾として仲間の撤退の為に最後まで闘った男も爆発した

　彼らに栄光はない、勝利も無い
栄光は支払いの一部としてベクターに加算しろと笑った
それであの男の発言力の一部になるなら本望だ
故に、後は「空では最強であるという翼にかける誇りのみ」

「夫ハ当ノ昔ニ死ンダ、早クイカナイト浮気ガ心配」
　七年間溜め込んだ信頼を吐出し、偽装降伏からベットで相打ちをしかけた女戦士がいた



　死んで、殺して、殺されて
めぼしい神を全て斬り殺して、鮮血の中彼らは飛ぶ
「おう、もう良いな!!てめぇら生きたい奴は生きろ!!
「生きて神様連中の計画に毎日火をつけて生きろ」
　族長の風の声に戦士達は笑う、笑って適当な略奪品を手にとって各自四散する

　北に、南に、西に、東に
気絶させた天兵の綺麗所を、立派な剣を、宝石を盗賊の様に剥ぎ取って、担いで
……生き残って、神様相手にエンジョイでエキサイティングな生活をする為に
最悪の剣士としての名声を敵に鳴り響かせる為に!!

「ヒャッハ〜〜〜〜〜〜〜!!」
　こうして解き放っちゃいけない何かは少数とはいえ、本能のまま世界にときはなたれた
神陣営はこの件を情報封鎖し、鷲族の殲滅に動く
結果……彼らは死滅した様に思えた



『とある平原』
「へい、お嬢さんだいじょうぶかい?」
「お礼?いいのいいの、こういうのって趣味だからさぁ」
「え、どうしても?あ〜じゃあ……俺様の子供、孕んでくれないかい?」