自分は島に来てから巫女服を着て眠っている。決して女装癖ではない、寝やすいからだ
それとこれを着ていたらいい夢が見れる気がするんだ、そう信じて今日も眠る



「いいから全員早く逃げろ!巫女様も早く!」

「お前はどうするんだよ!」

「俺は『ここは任せて先を行け!』っていうのがやりたいの!とっとと行けよ!」

「……分かった、さよなら」

「さよならだ、生きろよ片羽」

あいつの脂肪の黄色は未だ目に張り付いたままだ



「大丈夫か巫女様!」

「大丈夫じゃないに決まってるだろ、そっちは?」

「大丈夫じゃないさ、俺たち4人意外全滅だよ
 それと少し悩みを聞いてほしいんだがいいか?」

「相談所は本日閉店だ、諦めてくれ」

「移転してでもいいから続けろよ、不景気だからってケチな奴だな
 俺の悩み…というか願いは1つだけだ」

「何だよ」

「生きろ」

こいつの飛び出た内臓の赤は未だに世界を血の色に見せる



『ねえ片羽』

「こんな時になんだよ見兎」

『ちょっとしたお願いかな、生きてよ』

「言われなくても生きるさ」

『ねえ片羽』

「なんだ?」

『私さ、多分死んじゃうよねこれ』

見兎の冷たい体温は未だに夜風をさらに冷たく感じさせる



気が付くと目の前には壊滅した村があった
鉄錆の臭いはしておらず、燃える家屋も存在せず、ただひたすらに死が存在していた
初めての夢だがどこに行けばいいのか分かる。自分はひたすらに神社を目指した
神社には多くの屍が詰みあがっていた
その数百を超える骨と腐肉と血でできた村人たちは呻き声なのか小声で何かを呟いている
自分がその屍の山に近付くと全員こちらに気づいたのか顔を向け声をあげた

「「「「「「「「「「「「「「生きろ」」」」」」」」」」」」」」



慌てて飛び起きる。朝というには少し遅い時間だ
夢のせいで呼吸が速くなって冷静ではいられなくなる
あれが夢なのは分かってる。実際は自分が思い描いただけで皆が自分を呪いに来たわけじゃないことも
それでも落ち着いてなんていられなかった、その感情のまま自分は…静かな狂人は外に向かって歩き出す

「いい夢だったな、今日は一日いいことがありそうだ」

.

このページへのコメント

変わらないためには努力が必要ですからね。
失いたく無い事の風化を防げる。確かに良い夢でも有るのでしょう。

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Posted by クロマツ 2016年09月14日(水) 20:38:39 返信

これが幸せな夢って・・・、なんとも言えねぇなぁ。

作成お疲れ様でした。

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Posted by 安藤竜 2016年09月14日(水) 18:30:04 返信

作成お疲れ様でした!
村人全てに愛されていたからこそ、生きろ、それは呪いとも思えてきますね

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Posted by ゾディー 2016年09月14日(水) 18:22:13 返信

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