この話に救い等ありません
それでも読みますか?読まれる場合はお覚悟を

 救いがあるとすれば……



 とある刀の話をしよう
その刀は鳥人ホルスの腰にさしている白に赤が混じる柄に銀の鍔に白い鞘
この刀の話をしよう

 刀は丁度三年前、ホルスが里を旅たつ時にとある巫女の父親によって作られた
巫女とは鷲族の神と交信する彼らにとって重要な立場の女性だ
彼らは土着の亜人である、永劫の時の流れに身をまかし、世界各地に人に混ざって生きてきた
それゆえ巫女としても彼女でそれなりに代を重ねている
彼等が人々の前にあらわれた理由は「環境の破壊を止める為」である
彼らは雄雄しく戦い、戦争を終わらせる原動力となった
……彼等の活躍はあまりに遅かったが

 神の召還など勿論、彼らは反対した
わかり切っている事なのだ、彼女がここを見ればどうするか等
ただ、彼らは所詮少数であり、人類の敵であった……押し切られ、今に至る

 彼らはそれでも創造神を静止した
彼らはこの世界を、例えくすんだ空だった世界でも守った、守ろうとしたという自負と……この世界に対する愛着
それが彼らに交渉という道を選ばせる
神を通しての交渉はまるでうまく行かず、彼らは創造神を敵に回した

 戦って、戦って、戦って
ことある事に創造神と交渉しようとしてもなしのつぶて
戦って、戦って、戦って
10年、少年が大人になるまで戦い抜いて
……数を滅亡寸前まで磨り減らすまで戦って彼らが燃え尽きる寸前に作られた刀



 少年の幼馴染であり、恋人であった巫女の身を溶鉱炉にくべ
その父親が打ち、鷲の主神自らが命を捧げて「神殺しの理」を埋め込んだそれ

 少女は願う「ただ少年が生き残る」事を
彼女は戦えない、ついていく事ができない
だから祈り、その願いを鉄へと託す

 鍛冶師は狂う、己が娘にそれを選ばせる事しか出来なかった現状を
大人の力の無さを嘆き、それを鉄に込める……嘆きと悲しみと
それが故に何者をも切れる様に、折れぬ様に、硬く、鋭く刃を作る

 神は、鷲の神は語る
正しさとはなんだ?神は全知全能といわれる……故に正しくなければならない
翻って創造神は正しいのだろうか?罰を与える?それは当然であるだが
だがだ
全てに罰を与えるのは全知全能としては些か、大雑把過ぎる
故に我は我が創造せし民と共に朽ち果てよう


 ただし、ただでは滅びぬ

 神に詰問の刃を残そう
我にもう、力は要らぬ……刃に残そう
我にもう体はいらぬ……刃に食わせよう
我にもう魂もいらぬ……巫女と共に刃に乗せよう
我が民の最後の望みを二つ叶えよう



「汝、生き続けよ、歩み続けよ」
「汝、神に刃をもって詰問せよ……汝、正しく神であるか?全知全能であるのか?」

 歩み、いつか問え、生きて生き抜いて……問いかけ、生き延びよ



 その刀は鷲の神の死に際の力の一部で封印されている
今はただのどこまでも頑丈な刀に過ぎない
封印は破られることなく、時が過ぎる事を死した巫女は祈るだろう
封印が破られる事とはそう……死に瀕した時か、神に相対する時なのだから



「汝、神足るや?」

このページへのコメント

悲恋ですね。
刀がずっと、共にあることを信じて…

0
Posted by 御劔(ミツルギ) 2016年09月21日(水) 08:45:59 返信

戦えないから、その身を捧げる。・・・・・・。
悲恋ってのは、どうもこの世界にゃ溢れすぎてるなぁ。

作成お疲れ様です。

0
Posted by 安藤竜 2016年09月21日(水) 06:17:39 返信

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