【R-18】シュテルとシュルクは遭難した島で貴方たちと生活するようです【安価・あんこ】

ーーーえ？自分の体についてッス？ーーー


「……（ムクッ）」

いつもの朝、今日も訓練と見回りの１日が始まる。

「…ふぁぁ…」

ベッドから飛び降りて洗面台に向かう、何か歩きづらい上に視点が低い気がするが気のせいだろう。
そのまま、毎日向き合う髭面を拝むために鏡と向き合う、今日もパッしない顔を見るとげんなりするが…

「……？こんなに台高かったでしたっけ？ッス…」

今になって思えば相当鈍かったのだと感じる。

「……これ、なんかおかしくないッス？」

今更である。
ようやく覚醒し始め、焦りが見えてくる、とりあえず部屋に戻り全身鏡を覗いてみると、そこには一羽のペンギンが立っていた。

「………ペンギン？」
「………………ペンギン！？え？なにこれッス！？」
「ひぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ！！？？」

早朝、兵士寮一面にこの叫び声が響いたという。



『んで……ラッドの部屋から叫び声が聞こえたから駆け付けてみたら、ペンギンが一羽バタバタ暴れてたんだが……しかも喋るし。』

［ラッドはどこに行ったんだ？外出許可も出てないし、そもそも昨日はあいつ、真っ先に部屋に戻って寝てたろ？］

【……ふぁぁ、夜間巡回も特に問題なかったぞー。ラッドの部屋が開いた様子もなかった。】

「み、みんな！さっきから言ってるッス！自分がラッドッス！！信じられないのはわかるッスけど話聞いてぇ！！」

場所は食堂、先程からこのやり取りを数回繰り返している。
数十人の同僚に囲まれ、混乱しながら説明するもわかってくれない、当然と言ったらそこまでだが。
そこに一人の同僚が一言。

《ラッドなんてそのうち戻ってくるだろ…それより食いたりない…今だったら街のパン屋開いてっかなぁ…メロンパンメロンパンっと…》

その時…そこに居たはずのペンギンは影だけを残して消え、次の瞬間には《》の後ろに佇んでいた…複数のメロンパンを抱えて…

「お任せあれ！どうぞッス！」

誰もペンギンが消えた事に気づけず、いつの間にペンギンがメロンパンを持ってきていたのか誰も見えていなかった…やっと把握した兵士達がその光景を見て、

［いっせーのっハイっ！］
全員＜ラッドだこれーーーーーーーーーーー！！！！！！！！＞



「いやー！信じてもらえてよかったッス！」

［いや、お前これからどうすんだよ…］

『その姿じゃ仕事にならんよなぁ』

【とりあえず、上に言ってきたら？パシリしとけばラッドって認めてもらえるだろ】

「そうしてくるッスー」

その後、喋るペンギンは街全体をパシリでラッド本人と認めさせ、王様との会見に至る。
王様とは最初の入隊式でお目通りしたっきりであった。

＋ふむ…貴様は箱舟の噂を聞いたことあるか？＋

「箱舟…でありますか？」

＋あぁ…この世の救いを目指す舟…そこなら貴様のその姿をなんとかできるやも知れん…今の我が国では貴様をこのまま住まわせることしかできん…なればこそ貴様が決めろ。元に戻る可能性を探すか。平穏な毎日をその姿で過ごすか…！＋


かくして、呪われた元人間のペンギンラッドは、少ない情報から箱舟を探しだし乗り込むのである。
何故自分が？何故この姿に？どうやって戻るのか？解らないことだらけだが彼はへこたれない。

「ペンギンでもパシリはできるッス！から！」

自分が最初以降それほど困惑してなかったのはパシリがいつも通りできると判断したからである。
ともあれ島に漂流しても彼は変わらない、焦りもない、いつものパシリ道が始まるのだ。


ーーーーこんなところッスかねぇ…そんな面白くもないでしょ？さぁ！今日も１日皆さんのお役に立つッス！ーーーー


終わり！