少年は荒れ果てた大地に立つ
姉と共に歩いた商店街もあの子共に微笑んだ宮殿も、全ては灰燼と化していた
友と修練を積んだ道場も今はなく、我が家も瓦礫となり果てる

 少年はただ無言で瓦礫を漁る
道具は使えない、彼らが傷つくかもしれない
爪が割れ、朱が視線に入る

 それがどうした

 ジリジリと照りつける陽の光、身を焼き体に塩の結晶を作る
水の補給などない、故に血をなめ、唾液をすする

 この程度の痛みがなんだ

 一個づつ友を、形見を掘りだす
瓦礫を手で退け、慎重に一つづつ
折れた刀を集め、破片も一つづつ

 もう俺にはこれぐらいしか出来ない



 最後にあの子の笛を見つける
欠けた、色あせた白い笛
枯れ果てた筈の涙が頬に流れる
胸に抱いて少年は慟哭する

 これが最後だ、泣くのは
本当の涙はここに置いていく
だからこれが最後だ



 夕日を背にいくつもの刀が荒野に突き立つ
戦友、戦友、戦友……全ては陽気な男達だ
そこにそれぞれの関係者の形見を埋めて……敬礼

 生きるのだ、託された分も
生きるのだ、この風景と痛みと託された刀にかけて
生き抜かねばすべてが、無い事になってしまう
それは赦されない……だから生き抜くのだ



「行ってきます」
少年は……ホルス後ろを振り返らずいく……どこまでも続く赤い大地を



 夏草や兵どもが夢の跡……全てには滅びが来るならば……では次に滅ぶのは?



「なんてな?」

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