【R-18】シュテルとシュルクは遭難した島で貴方たちと生活するようです【安価・あんこ】

「という訳でプリンを作ろうと思う、大魔術師のラケルだよ。」
竜の魂を持った人間の魔術師、ラケルが宣言する。
厨房に集まったのは彼女と、
料理が得意で無いラケルの助手に呼ばれた二人。

「私もプリンが楽しみな助手のクロマツと」
「俺っちも好きっすよ！ラッドッス！」
樹人の翻訳家、クロマツと、ペンギン獣人のパシリ、ラッドが答える。

「で、プリンなのだが、卵は幾つか手に入った。果糖も私が生成した。
だが牛乳が無いな。」
材料を確認し、問題点を挙げるラケル。
この島ではスライムを除き、プリンの為に捜索された鶉が唯一の家畜（執筆時点・フレーバー含む）なので、牛乳は無い。

「なので、今回はバナナプリンで行こうかと。
バナナっぽいもの（以下バナナ）は見つかりましたし。という訳でラッドさん。」
「はいッス！これっスね！」
ラッドが数本のバナナを持ってくる。
適度に熟れた、黄色に少しばかり黒い斑点の有るバナナだ。

「広義のプリンだね。私はどれも好きだから今回はそれで良いよ。」
ラケルからの承認も降り、今回はバナナプリンという事で話は固まる。

「では、調理に入りましょう。
先ず、バナナの皮を向き、丁寧に筋や芯を取り除きます。」
「除いたのはどうするッスか？」
「スープなりに入れて食べるか、スライムに食べさせるかですね。まあ無駄にはしませんよ。」
プリンにして引っかかる部分や、黒い部分を丁寧に取り除いてゆく。

「うん、いい具合じゃないかな。」
「そして之を潰します。ラッドさんお願いしますね。」
「せっせ、せっせ、潰すッス」
棒を使って潰していくラッド。所詮はバナナ、たやすく潰れ、直ぐに作業も終わる。

「此処で卵だね？鶉だから結構な数になるな。今は偶の贅沢だね。」
大量の鶉の卵を割っては入れ、割っては入れ。鶏の卵と比べたサイズの小ささが際立つ光景。
今の鶉の数では、そうそう作れる物ではない。

「まあ、扶養する鶉さんを増やせれば多く作れるようになりますよ。」
「そうっスね！アビニィさんに期待ッス！」
飽く迄今の数では。何れ増えれば、気軽に作れるように成る日も来るだろう。
そう希望と期待を示す二人。

「ともあれ卵液はこれで完成ですから、カラメルですね。」
プリンの命、カラメル。
単純ながら、微妙な火加減の必要な作業だ。

「果糖に水を少し加え、適度に加熱ッス！」
「火加減はおまかせを。」
クロマツが火加減を、ラッドがカラメルの加熱具合を調整する役割分担。
ラッドは鍋を火から近づけ、離し、適度な加熱を続けてゆく。

「ああ、伸ばした枝は火かき棒にもなるんだ。便利だねそれ」
「樹人ですから。」
クロマツは火加減を、指から伸ばした太目の枝で行っている。
生木は燃え難い物なのである。

「出来たッス！」
加熱十分と見たラッドが水を加え、カラメルの完成。
「いい具合ですラッドさん。では、これを器に注ぎ」
「その上から卵液をそうっと注ぐ。だったね。」
器にカラメルと卵液を注いでゆく、三つの器に均等に。

「ええ。そしてホイルの代わりに今回は広めの葉を」
「これッスね！弛まないよう、蔦で縛って」
ラッドが手際よく器に葉を乗せ、蔦で葉が卵液に触れないようにしていく。

「後は湯煎で加熱ですね。水が沸騰してから５分ほど。」
強火で加熱することしばし。

「完成だね。うん、美味しそうだ。」
「ええ。後は冷やせば美味しいバナナプリンです。」
「その間に俺ッチは果実水とスプーンを持ってくるッス！ニーアさんが作ってくれたっすよ！」
ラッドが冷やす間に、手際よく食卓の準備を整え。

「いやぁ、ここでの初プリンだね。」
「ええ、不肖、私クロマツもワクワクしています。」
「プリンは美味しいッスからね！」
そして誰からとも無く黙って一拍

「「「頂きます！」」」