【屍を超えて辿り着く先を目指して】

 夢を、夢を見ていました
夢の中の「私の愛した世界はどの未来を通っても撃ち崩れる運命」にあります
届かない、届かない、届かない
水鏡に見える運命は全て真っ暗何もない
この事を伝えても真っ暗、途中で曲げられ、圧し折られる
今から対策しようとすればやはり私は死ぬ……神だって死ぬ時は死ぬ
だから私は……「人と子供達に託す事にした」

「姫よ、考えなおさぬか?」
愛すべき鷲の神……父上が私を止める
だが、止まる訳にはいかない
笑顔で、悟られぬ様に全てを覆い隠して

「嫌です、お父様♪……だってこんなに美しいんですもの」
そういって半分本気、半分演技で熱い視線を寝床に座らせた「東国より死の間際に連れ去った身長の小さな男を見つめる」
女性のごとき端正な顔立ち、小さいながらしっかりとした体付き、そこにいるだけで周りに奇妙な感覚を抱かせる存在感、
腰に刀と着込んだボロボロの鎧……
だが、男の目は死んでいた……大事な物を全て失い、彼には何も残っていなかったのだから



 ああ、だからこれからこの方の全てになろう
全てを無くしたというならばその全てを私が埋めよう
彼は今から私の「共犯」になるのだ……彼に黙って「共犯」にするのだ
その報酬になるのならば、彼の肛門だって舐めて、目的が果たせるならこの命も捧げよう

 見つめていた戦場でどこまでも鮮烈に輝いていた男に運命の女神……全てを見通すものは優しく微笑みかける
「こんにちは、源義経様……お話を聞いていただけませんでしょうか?」



 彼女の神格は砕かれ、人に堕ちる
それは一人の男に狂った女神の暴走として世に刻まれ、それ以上の情報は彼女の胸の中
そもそも神格を砕かれた時に「未来が真っ暗という情報ごと砕いてもらったのだから」それは誰にも伝わらない
彼女に残った思いはこの愛を砕かれた故に狂ってしまった男を愛し続ける事と誰よりも強く抗える力を一族に持たせる事

 力は一族全体に一旦は分散するだろう
分散した先で何かを掴むかもしれない、得るかも知れない
【そして死んだのちにもそれは続いていく】
だが……血を継いだ者が絶えれば【元に戻ろうとする】
【受け継いだ物を受け入れつつも元に戻ろうと……生き残ろうとする】
そういう性質を仕込、彼女は笑う

「【テムジン(義経)】愛しています」
「どこまでもしぶとく、強い子を私にお授けください」
「今度こそ失われない子達を、家族を作りましょう」



 世界を終わらせない為に幾千、幾万の子孫の屍の先に未来を見よう
弱き者は淘汰されるだろうがそれはどうしょもない
死の国で私が抱きとめて、殴られよう

だから子供達よ
私の屍を超えて未来を掴め
【源義経であり、チンギスハン、運命の可能性を内包し、それ以外の可能性も内包した私の子孫は一寸しぶといぞ】
……この子達が世界の闇を払う一助にならん事を……そう笑って祈り、神は砕かれた
未来は見えず、見ずに砕かれた



 とある日、ある家族に翼のはえた子供が生まれる
殺害されかけたその子は人々の前から忽然と消えうせ……化け物に恐れを抱く家族は一斉に口を紡ぐ
その赤ん坊はとある鷲の神が攫い、自分の作っていた民達の中に入れて育てる事にした

「鷲族」
戦い抜く事、生きる事、抗い続ける事
それが彼らに課せられた運命である
そうなるように仕向けられた存在が彼らである

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