「終末的環境における人類の適応進化の可能性」 



発表者:有栖・六郎


序論

古来より生物は環境の変化に適応するべく進化を続けている。
我々人間もまた、類人猿から進化を繰り返してきた結果の産物である。

現在、地球環境は悪化の一途をたどっている。後数年もしないうちに、この星は滅びを迎えるであろう。
そのような現状へと陥ってるにも関わらず、なぜ人間は進化できていないのであろうか。
水がない場所でも生きていけるように動植物が進化するように、
我々人間もこの現状でも生きていけるように進化してるべきではないのだろうか。

いや、既に環境に適応すべく進化している人間は存在するであろう。
ただ個体数が少なく、大部分は進化できていない人間であるため、種としての進化が完了してないだけであるとも考えられる。

(略)

では進化した人類が存在すると仮定して、どのような進化を遂げているであろうか。
進化した人類はより過酷で陰惨な環境でも生き延びられるようになっていると考えられる。

現在の地球は世界中で少量の資源を巡って争いが頻発している。
ならば進化した人類はその争いを生き延びるための進化を遂げているであろう。
感覚面では、他者……他の生物の「悪意」を敏感に察知することで余計な争いに巻き込まれないよう行動できるように進化するのではないか、
といった仮説を立てることができる。
では肉体面どうなるか。
争いから生還するためにより強靭な肉体を有し、超人…地球外生命体を祖に持つと目される、強靭な肉体を有する人間に酷似した生命体…のように、
例えば肉体を金属のように硬質化させるといった特異的な能力を身に付けているであろうと予想できる。

(略)

現時点では論理上の存在ではあるが、この卓越した頭脳と強靭な肉体を宿す必然的かつ特質な進化を遂げた人間のことを私は

Genius(特質な)
Excellent(卓越した)
Necessarily(必然的)
Tough(強靭な)
Logical(論理上の)
Evolved(進化した)
huMAN(人間)

略してGENTLE-MANと呼称することとする。

(略)





一人で優雅にティータイムを満喫する男のもとに、紙束を小脇に抱えた少女がやってきた

『おとうさまー、これってなにがかいてあるのです?』

そう言うと少女は男に持っていたレポート用紙の束を差し出す

「んー、どれだい……ほう、懐かしいものを見つけてきたものだ」

かつて自分が"己の存在"を学会に公表した際の論文を懐かしそうに手に取る
当時は亜人の存在すら公にはされていなかったのだ。当然この論文は学者達に一蹴されたものだ

「これはね、【英国紳士】について私が書き記したものだよ」

男の返答に少女は首を傾げて聞き返す

『じゃあ、おとうさまのことがかかれてるのですか?』

「ああ、そうだよキャロル。誰よりも優雅で、聡明で、強靭な上流階級の人間。それが英国紳士だ」
「ならば敵の悪意を見抜き、その強大な力で弱者を守り、人々の上に立つ存在こそ……まさしく英国紳士だとは思わないかい?」

男の言葉に頭を悩ませつつも少女は堂々と答える

『う〜ん……むずかしいことはわかりませんが、おとうさまがすごいということだけはわかりましたわ!』

「今はそれでいいさ。それじゃあこの論文を私の書斎の元あった場所に戻してきなさい」
「勝手に書斎に入ったお仕置きはその後でだ」

『ど、どうしてそのことを……さすがはおとうさまですわ!』

「これくらい当然のことさ、英国紳士としてはね」



娘を地下の仕置き部屋に放り込み、男はティータイムを再開する
先程の、自分に称賛の言葉を浴びせる少女の姿を思い出し、紅茶を啜りながら心の中で呟く。

ああ、キャロルよ。私の娘よ
無垢で無知で愚かでどうしようもない、されど私の血を継ぐ娘よ
いずれこの人間の世は神とやらの手によって滅び去る定めだ
だが心配ない。滅びるのは人間だけだ
人間から進化した存在である私と、その血を引くお前、その他まだ見ぬ人類から進化した者達は生き延びるだろう
そして生まれ変わった世界で、前人類の二の舞とならぬよう、私の血を継ぐ者が新人類を導く存在となる
それが英国紳士として、進化した人類としての責というものだ
さぁキャロルよ大きくなれ。身も心も成長し、血に目覚めた時こそ、お前の本当の誕生なのだから……



男は気づいていなかった
どれだけ人から進化したといえども、神々からすれば等しく「人間」であるということを
そして「人間」である以上、神が見逃すはずがないということを
男がその真実に気づいた時には既に手遅れとなる未来を……

このページへのコメント

これが英国紳士ですか。
高く、良い目標ですね。

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Posted by クロマツ 2016年10月12日(水) 02:09:32 返信

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