本編とは全く関係ないであろう舞台裏のお話。

「ベルの奴はもう船に乗った頃合いかねえ」
照明が落ち、薄暗くなった酒場の店内で、中央のテーブルに座りながらタバコを吹かす人影が一つ。
軍服のようなデザインのスーツに身を包み、銃剣を携えた女性。この一座の座長その人である。
「姐さんもまた手のこんだことするよね。わざとああいう依頼ばっか取ってきて、ベルが離れるように仕向けるんだもの」
座長の背面を守るようにしてテーブルに座るのは、同じような服を身に付けたベルカナの同僚であり、一座の姉として頼られていた狼の獣人。
それ意外にも、チラホラと店内には人影が見て取れる。
それは全て一座の踊り子であり。同じデザインの制服を身に付け、それぞれが最も得意とする武器を携えていた。
無論、ベルカナは彼女たちと交流こそあるが、この一面を知らない。
いや、知らせないように生活していた、という方が正しかった。
「拾った時から決めてた事だ。一応の護身術は叩きこんだがアイツは如何せん才能が無さ過ぎる……こっちの仕事にゃ関わらせない、と」
「まー、似たような子達は何人もいたし、それぞれに一座を離れても不思議じゃない理由を作ってたもんねえ」
狼の獣人がやれやれ、と溜息を吐き出し、周囲のメンバーがお疲れー、など労いの声をかけてくる。
「しかしま、随分人が減っちゃったね」
狼の獣人が周囲を見渡せば、今この場にいる人数は半分にも満たない。一座としての公演は規模を縮小せざるをえなくなるだろう。
「は、元々よりも何人かは増えてんだ。それで十分じゃないか……」
座長が笑って言うのと同時、周囲の空気が張り詰める。
さながら狩猟を前にした狩人のような、狩る側の存在が纏うような、そういった雰囲気の混じったものに。
「……来たみたいね」
「さぁて、お客様を出迎えてやろうじゃないか、盛大にね!」
そうして店の外装は衝撃波によって吹き飛ばされ、凄惨な街の様子が飛び込んでくる。
大型の魔獣と、それを使役する神の一柱による襲撃だ。
だが、座長と呼ばれた女性と、その部下である『一座』の面々はその状況を前にしてなお笑みを深く、濃いものにして。
「妹分の船出だァ……!派手に祝ってやろうじゃないか!」

かくして、賽は投げられる。
その結末は、誰も知らない。

このページへのコメント

作成お疲れ様でした!

しっかり愛されていたようでよかったですね、ただそれをもっと表に出してくれればとは思いますが……

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Posted by ゾディー 2016年09月13日(火) 18:05:32 返信

こういう本人視点以外の裏話を読むと、いかにそのキャラクターが周りから想われていたのかが分かっていいですよね。

作成お疲れ様でした。

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Posted by 安藤竜 2016年09月13日(火) 16:38:10 返信

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