今日の出来事を思い出して吐き気と目眩、体中の鈍痛が止まらない…
神兵…あれを見てから私の中の殺意と憎悪が膨れ上がるいっぽうだ
『右腕』は必死に抑えてても隠せぬほどに、禍々しく悍ましい瘴気を放ち続けている
そんな、状態で皆の近くに居られない…そうして、私は夜遅くに拠点を抜け出した

拠点から、遠くに離れた砂浜を歩きながら思い出すのはまだ「私」だった時の記憶

そう、あれは「私」だけでなく私にとっても運命となった日だ…



この日は私が軍に正式入隊してから一年経った雪の舞い散る綺麗な夜でした
そんな夜、私は今…大軍を率いて故国に攻め込んできた敵に敗北して地に伏していた

「あっ…ガァ…ッ!」

「ふん、所詮は下等な人間。創造神様に選ばれた神の使徒たる私には及びもしないわね」

周囲は私を庇って死んだ仲間たちの死体の山が築かれ、白い雪の絨毯は真っ赤な血で染まっていた
自身もまた、脇腹を大きく抉られ目の前がぼやけて見えている…確実に死の気配が漂っていた
そんな、私の前に立ちはだかる女…多くの魔獣や亜人共を率いた神の使徒と名乗る者は私に告げる

「本当にツマラナイわね。こんな、ゴミ屑相手にアイツらは梃子摺ってたの?はぁ、所詮は獣ね」
「まあ、いいわ。貴女にはこのまま、私の鬱憤を晴らさせてもらうわ」

「…何を……する…つもりよ…?」

神の使徒を名乗る女が嗜虐的な顔で近づき私の右腕に触れる

「ふふ…貴女はどんな声で鳴いてくれるかしら…ね!」

その言葉と同時に彼女は私の右腕を万力のように強く握りしめ、捻りだしたのだ

「っ…!?ぐぅあぁぁアァアァァァァ…!」

「あはははは、いいわねその声!それじゃあ、この腕を捩じ切ったらどんな声に変わるかしら?」

そして、彼女は私の右腕を捻り取ってしまう

「あっ……あっ………っ…ああああああああああああああああああ」

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
死んじゃう死んじゃう死んじゃう死んじゃう死んじゃう死んじゃう死んじゃう死んじゃう

「いい声で鳴くわね。痛いかしら?苦しいかしら?でも、簡単に死なないでよね」
「貴女は愚かしくも創造神様に楯突いた罪で、極限の痛みと苦しみの中で死ぬのだから」

そして、彼女は私の頭を鷲掴みにして……その、瞬間

「なっ、なに!?」

「あ……ぇ…?」

周囲に存在した魔獣や亜人共が一瞬で破裂して、血肉の塊へと変貌したのだ
それに驚き彼女は私の頭から手を離して、周囲を見渡し……その襲撃者は気づけばすぐ目の前にいた
その容姿を言い表すなら、形なき異形。暗く昏く冥い…まるで、擬人化された深淵そのものだった

「…っ!?……お前は誰だ…人間や亜人、魔獣にも見えない……でも、この気配は…まさか、神?」
「…それなら、どういうつもりかしら?神である貴方には私を害する権利がある筈がな……ぁ…」

「――――#'△※-^☆○¥*;」

彼女がその異形へと何かを言い放っていると、
ソレは何かを呟き一瞬の内に彼女の上半身が内側から爆発したかのように破裂した
それは、まるで周囲の魔獣や亜人共と同じような死に方で血肉の塊に変貌して
そして、その異形はその女だったものに興味をなくすと私に近づいてくる

「…ぁ…うぁ」

「――○*▽;¥*※?”■■」

理解の出来ない言語を喋る異形に私は底知れぬ恐怖を抱いていた
それは、今なお自身の命の灯火が消えていっていることを忘れるほどの恐怖心を
その存在をすぐ近くで知覚したことで理解してしまう……アレは知覚も理解もしてはいけない■■■と

「…………ぁ」

「――?#■■※■○■■■■■■■■■」

理解できない言語…しかし、不思議なことにその異形が何を言っているのかを私は何となくだがわかってしまった
■■や■■の■■を乗せた言葉で、アレは問うているのだ…私の望みを。だから、私はこう答えてしまった…

「………死…に…たく…ない……死に…たくないよ………私は…まだ死にたくないよ!」

「――■■■■■■■■■■■■」

その最後の力を振り絞って答えた望みを最後に私は限界を迎え、死んだような深い眠りに堕ちることとなる






そうして、目覚めた頃には私は真っ白な病室のベッドの上にいました
なんでも、此度の戦いは多くの犠牲を払いながら私の力で勝利したというのです
それを聞いて最初、アレは夢だったんだと思いましたが…しかし、アレは夢ではありませんでした
だって、失くなった筈の右腕にはあの異形の様な悍ましい気配を漂わせる醜悪な『右腕』が植え付けられていたのですから…



そんな、「私」の昔の記憶を思い出しながら……私の頭の中では何時迄も消えない声が響く
――■■、■■、■■■■■■■…という■■の声が何時迄も…何時迄も……



あの日、貴方は私に■■を授けました……だけど、私には貴方の■■は耐えられません

このページへのコメント

異文化交流、ですね。
さて、如何なる存在であったのか。

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Posted by クロマツ 2016年09月18日(日) 22:08:36 返信

作成お疲れ様でした!
一体何なんだったのでしょうね……

0
Posted by ゾディー 2016年09月18日(日) 21:34:38 返信

作成お疲れ様でした。
生を願ってこうなるとは、なんともやりきれない。

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Posted by 安藤竜 2016年09月18日(日) 21:33:39 返信

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