最終更新:ID:zQfgssqdMg 2016年09月23日(金) 06:24:39履歴
R-18G表現が出てきます、ご注意ください
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『はあ…』
一人の少女が石の上に腰掛けていた。
よく見ると、少女の顔や腕にはアザや擦り傷がある。…普通に考えれば虐待かも知れないが、残念ながら少女は組み手の後である。
ただし、【三途の川が何度か見えかかるほど】であるが。
『次は魔術の修行…苦手なんだよなぁ…』
気が重い。
少女は頭脳労働が得意な訳ではない、才があるわけでもない。
だが、それを会得せねば自身が学ぼうとする『武術』は極められないのだ。
(ジレンマだねぇ…ん?)
ふと、いつの間にやら少女が隣で自分を見つめている。
自身の一回りは小さい少女は、じっとこちらを見つめている。
『…なにかな?』
『…怪我』
『え?』
『怪我、してる』
少女がたどたどしく喋る。
初めて、自分の意思で誰かと喋るように。
『あ…あー、こんなのかすり傷だって…え?』
少女が掌を座り込む少女の額に重ねる…すると瞬く間に頬にできた青あざも、腕の擦り傷も、全身の痛みも全て無くなっていた。
それを見て少女は満足げに頷く。
これが少女…春(ハル)の忘れられぬ出会いであった。
---
それ以来、少女とハルとの交流は続いた。
二人の会話は、それこそ他愛ない話ではあったが双方にとってはとても貴重であった。
少女はふもとの村に住んでいるらしく、みなしごであった自分を老夫婦が育ててくれたという。
自身もみなしごであったハルは、親近感とともに、親がわりである武侠一味から感じるものとはは違った『暖かさ』を少女を介して感じていた。
『ハルの奴、修行に励んでいるようだな』
長髪の女性が、ハルの組み手を見てつぶやく。
「つまりアイツにも【コレ】が出来たってことかぁ?いやあ、辛いもんだねぇ《お母さん》?」
筋骨隆々の大男が小指を立ててにやける。
『たわけ、そういうものではないわ』
長髪の女性は、暖かな目で微笑んだ。
『…血腥い風、不吉な風ね…』
窓際で、トンガリ帽子の女性がなんとなしに呟いた。
---
『ハル…これ!』
少女が組紐を手渡す。
『これは?』
『お守り!ハルが幸せでいられますようにって!』
『ありがとう、身内以外の誰かから、何か貰うのって初めてだなぁ…』
---
「うし、今日はここまで!」
『ありがとうございました!』
挨拶を済ませるやいなや、脱兎のごとく駆け出すハル。
そして、少女といつも会う場所にたどり着く。
(今日も来るかな…)
石に腰掛け、少女を待つハル。
しかし、いつまで経っても少女は来なかった。
(おかしい…遅すぎる…何かあったのかな…あれは、まさか!?)
山のふもとから黒煙が立ち上っている。
不穏な気配を感じたハルは、すぐさま山のふもとへと駆け下りていった。
(頼む、無事でいて!)
・
・
・
『見え…!』
言葉が出なかった。
人が、バラバラにされていた。
人が、杭のようなもので串刺しになって焼かれていた。
人が、雑巾のようにねじられていた。
人が、局部を切り取られて口に赤子の首を捻じ込まれていた。
死臭と熱気が、小さな村を覆いつくしていた。
『あ…ああ…!』
叫びたくても、声が出ない。
泣きたくても、涙が一滴もでない。
『そうだ…あの子…は…』
そう言いかけた直後、あるものが目に飛び込んだ。
裸に剥かれ、両目を抉られ、五臓六腑を引っ張り出され、ハリネズミのようになった『人間だったもの』
それが、あの少女であったということに気づくのは、そう時間は掛からなかった。
『う…あ――――――――――――――!』
慟哭が、響く。
悲しみが、頬を伝う。
けれども、帰ってくるのは静寂のみ。
『あっれぇ?まだゴミがいたの?いっけなーい☆くっさいゴミはゴミ箱へ処分しないとねー♪』
この場にそぐわない、軽快な声が後ろから響く。
『あなたは…』
声のする方にいたのは、ハルよりも一回り小柄な童女。
童女は両手に二本の杭のようなものをもって、片方を玩んでいる。
『あたし?あたしはここの動くゴミ共を片してくださーいって神様からお告げがきたからここにいるの☆』
いま、ナんてイッタ?
ごみ?おツげ?ワけガわかラない。
『というわけでー、死ねや☆』
まるで話しかけるような気安さで杭を投げる童女。
じぶんがくみかわる。
じぶんがくろくそまっていく。
わたしが■■■■にかわっていく。
なみだがあかくなっていく。
なンでコろした。なにガオつげだ。ナんでだ。なぜダ。
ナんでおマエはヘいゼんとしている。なンでおマエがシんでいない。
シぬベキハオマえデハなイのか。ユルせない。ユルセナい。
…コロス
コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス
コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス
コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス
コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス
コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス
コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス
コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス
斬殺
撲殺
焼殺
圧殺
轢殺
毒殺
滅殺
絶殺
殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺
殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺
殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺
殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺
殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺
殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺
殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺
「きひっ」
---
気づいたときは、蓮根のように穴だらけになった童女が転がっていた。私が殺したのだろう。
師匠―――――いや、母さんは無言で私を見つめていた。
『ハル…』
『…母さん、少しだけ、胸を貸してくれる…?』
『ああ、いいとも』
母の大きな胸の中で私は泣きじゃくった。
この日、修羅が目覚めた。
私の心に、今も黒いシミが蠢く。
それでも私は生きる。
この組紐(ねがい)を握り締めて。
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『はあ…』
一人の少女が石の上に腰掛けていた。
よく見ると、少女の顔や腕にはアザや擦り傷がある。…普通に考えれば虐待かも知れないが、残念ながら少女は組み手の後である。
ただし、【三途の川が何度か見えかかるほど】であるが。
『次は魔術の修行…苦手なんだよなぁ…』
気が重い。
少女は頭脳労働が得意な訳ではない、才があるわけでもない。
だが、それを会得せねば自身が学ぼうとする『武術』は極められないのだ。
(ジレンマだねぇ…ん?)
ふと、いつの間にやら少女が隣で自分を見つめている。
自身の一回りは小さい少女は、じっとこちらを見つめている。
『…なにかな?』
『…怪我』
『え?』
『怪我、してる』
少女がたどたどしく喋る。
初めて、自分の意思で誰かと喋るように。
『あ…あー、こんなのかすり傷だって…え?』
少女が掌を座り込む少女の額に重ねる…すると瞬く間に頬にできた青あざも、腕の擦り傷も、全身の痛みも全て無くなっていた。
それを見て少女は満足げに頷く。
これが少女…春(ハル)の忘れられぬ出会いであった。
---
それ以来、少女とハルとの交流は続いた。
二人の会話は、それこそ他愛ない話ではあったが双方にとってはとても貴重であった。
少女はふもとの村に住んでいるらしく、みなしごであった自分を老夫婦が育ててくれたという。
自身もみなしごであったハルは、親近感とともに、親がわりである武侠一味から感じるものとはは違った『暖かさ』を少女を介して感じていた。
『ハルの奴、修行に励んでいるようだな』
長髪の女性が、ハルの組み手を見てつぶやく。
「つまりアイツにも【コレ】が出来たってことかぁ?いやあ、辛いもんだねぇ《お母さん》?」
筋骨隆々の大男が小指を立ててにやける。
『たわけ、そういうものではないわ』
長髪の女性は、暖かな目で微笑んだ。
『…血腥い風、不吉な風ね…』
窓際で、トンガリ帽子の女性がなんとなしに呟いた。
---
『ハル…これ!』
少女が組紐を手渡す。
『これは?』
『お守り!ハルが幸せでいられますようにって!』
『ありがとう、身内以外の誰かから、何か貰うのって初めてだなぁ…』
---
「うし、今日はここまで!」
『ありがとうございました!』
挨拶を済ませるやいなや、脱兎のごとく駆け出すハル。
そして、少女といつも会う場所にたどり着く。
(今日も来るかな…)
石に腰掛け、少女を待つハル。
しかし、いつまで経っても少女は来なかった。
(おかしい…遅すぎる…何かあったのかな…あれは、まさか!?)
山のふもとから黒煙が立ち上っている。
不穏な気配を感じたハルは、すぐさま山のふもとへと駆け下りていった。
(頼む、無事でいて!)
・
・
・
『見え…!』
言葉が出なかった。
人が、バラバラにされていた。
人が、杭のようなもので串刺しになって焼かれていた。
人が、雑巾のようにねじられていた。
人が、局部を切り取られて口に赤子の首を捻じ込まれていた。
死臭と熱気が、小さな村を覆いつくしていた。
『あ…ああ…!』
叫びたくても、声が出ない。
泣きたくても、涙が一滴もでない。
『そうだ…あの子…は…』
そう言いかけた直後、あるものが目に飛び込んだ。
裸に剥かれ、両目を抉られ、五臓六腑を引っ張り出され、ハリネズミのようになった『人間だったもの』
それが、あの少女であったということに気づくのは、そう時間は掛からなかった。
『う…あ――――――――――――――!』
慟哭が、響く。
悲しみが、頬を伝う。
けれども、帰ってくるのは静寂のみ。
『あっれぇ?まだゴミがいたの?いっけなーい☆くっさいゴミはゴミ箱へ処分しないとねー♪』
この場にそぐわない、軽快な声が後ろから響く。
『あなたは…』
声のする方にいたのは、ハルよりも一回り小柄な童女。
童女は両手に二本の杭のようなものをもって、片方を玩んでいる。
『あたし?あたしはここの動くゴミ共を片してくださーいって神様からお告げがきたからここにいるの☆』
いま、ナんてイッタ?
ごみ?おツげ?ワけガわかラない。
『というわけでー、死ねや☆』
まるで話しかけるような気安さで杭を投げる童女。
じぶんがくみかわる。
じぶんがくろくそまっていく。
わたしが■■■■にかわっていく。
なみだがあかくなっていく。
なンでコろした。なにガオつげだ。ナんでだ。なぜダ。
ナんでおマエはヘいゼんとしている。なンでおマエがシんでいない。
シぬベキハオマえデハなイのか。ユルせない。ユルセナい。
…コロス
コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス
コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス
コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス
コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス
コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス
コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス
コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス
斬殺
撲殺
焼殺
圧殺
轢殺
毒殺
滅殺
絶殺
殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺
殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺
殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺
殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺
殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺
殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺
殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺
「きひっ」
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気づいたときは、蓮根のように穴だらけになった童女が転がっていた。私が殺したのだろう。
師匠―――――いや、母さんは無言で私を見つめていた。
『ハル…』
『…母さん、少しだけ、胸を貸してくれる…?』
『ああ、いいとも』
母の大きな胸の中で私は泣きじゃくった。
この日、修羅が目覚めた。
私の心に、今も黒いシミが蠢く。
それでも私は生きる。
この組紐(ねがい)を握り締めて。
このページへのコメント
作成お疲れ様でした
救いがない、ですね……
黒いしみとは……
黒いシミ・・・。自分の中にいるナニカ。
つまり普段やたらと殴られるのはこれが原因だった・・・?
作成お疲れ様でした。