「とある少年の昔のお話」

夢を見た、寝るたびに見る夢を

最初に見えたのは寂れた家、周りで子供達が遊んでいる

僕はとある森の奥にある寂れた孤児院に住んでいた。
いつから、どうやってなんて覚えてはいなかったけど、
たくさんの兄弟姉妹達と不自由だけど楽しい日々だった。

視界が変わる

とある部屋、ベッドの上に白い女の子が寝ている

『白いお花を取ってきてほしい』
ベッドの前にいる僕に妹はそう言った
孤児院には医者がいない、重い病気は治らない
この子もその一人だった
白い花、孤児院に伝わる奇跡を起こす花、最後の希望に妹は…

視界が変わる

駆ける、駆ける、森を駆ける、木々は瞬く間に流れていく

片手には白い花が握られていた
僕は森を走った、少しでも早く届けようと
妹や弟、皆の待っている家へと
走っていった

視界が変わる

赤い空、崩れた家、火の臭い、黒い大きなナニカ

夢だと思った。夢だと思いたかった
黒い竜が空へと飛び去る、何事もなかったかのように
動けなかった、何もできなかった
「そうだ、みんな逃げてるに決まってる」
夢の中のぼくがそう呟いた、眼を光らせ周りを見る
右、いない、左、いない、後ろ、いない、前、いた
・・・崩れた家にみんないた

視界が変わる

暗い空、滴る水、消えた火、壊れたモノ

穴を掘る、深い穴を
家を崩し、抱きかかえ穴へと運ぶ
野花をそえ、土をかぶせる
なんども、なんども、なんども
・・・手が止まる、1人のヒトを見つける
運がよかったのだろうか、ベッドにいた妹だとわかった
丁寧に運ぶ、ゆっくりと・・・
何かを握っているのを見つけた
指を開かせ、握っていたもの、紙を取り出す

視界が変わる

十字の庭、空に浮かぶ月、添えられた白い花

少年は歩き出す、もうここには戻らない
何処へ行くのかわからない、この世界は終わっているのだから



目が覚める

「(…あまり寝れないな)」
そんなことを思いつつ木の上から飛び降り、あたりを見渡す
周りを見ると何人かの人たちが活動している
この世界で、生きるために
『いきて』
妹が書いた最後の願いを胸に
「おはようございますニーアです、今日もよろしくお願いします」
終わった世界でも今日を生きるために

このページへのコメント

生きての3文字は死ぬほど重いよな、そして君は願いとだけ取ったのか
前を向いて生きていけるのはいいことだな、胸の思いを抱いたままでいてください

作成お疲れ様です

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Posted by 片羽 2016年09月14日(水) 18:54:29 返信

作成お疲れ様でした!
いきて、たった3文字ですが、それだけ思われていた言葉ですね……

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Posted by ゾディー 2016年09月14日(水) 18:11:37 返信

兄妹を失った、か。
そういうやつ多いな、ここ。
まあ、みんな気の良い奴だし、寂しい思いはしねぇだろ。

作成お疲れ様でした。

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Posted by 安藤竜 2016年09月14日(水) 18:03:37 返信

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