「その手の先」



 斬って斬られて、救おうとして救えなくて、生きて欲しくて届かなくて、沢山、沢山届かなくて……託されて
体はずっと重くなったけど、まだ飛ぶ事は出来るから、手を伸ばして……でも届かなくて、託されて
まだ飛ぶ事は出来るから、だからもっともっと速く飛んで、音を突破してて……それでも届かなくて、託されて
それでも飛ぶ事は出来るから……届かせる為に、削って……やっと届いて、でも自分の手が届かない所でそれも消える

だから斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って
斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って
斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って
斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って
斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って
斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って
斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って
斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って
斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って
斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って

 鮮血の先に友、幼子が、恋人が大事な人が
「龍に燃やされない、神(化け物)に食われない、人に殺されない、死体さえ残らない死に方をしない普通に天命で死ねる、理不尽な死がない世界」
を作れると信じて「生き抜け」という大事な人達との約束を背負って
血塗れの道を進み、己を削った少年の辿り着いた始まりの話



 AHIRUの一室、ホルスの私室
そこには大量の荷物がそこにはある……雑多に様々な物
少年がこの部屋に担ぎこまれた時「形見分け」として少年の「戦友、知り合い」達が置いていった物だ
ちゃんと崩れないように作られたそこに……一匹の芋虫……SDモードの少年がいた



右腕と両足の「存在の力」を燃やして戦った……翼と片腕があれば戦える
色はいらない……見えて聞えれば十分だ、だから燃やした
昔の記憶も燃やしながら戦った……使わなきゃいずれ存在の力は満ちるだから精々
自分が誰だかわからない恐怖に、戦う理由を忘れない様に魂に刻んでいれば問題はない
いつかきっと平和になれば全部思い出せるし四肢も色も戻るだから何も問題なんてない

 そうやって戦っていたら、期日前に気絶させられてSD化されてここに突っ込まれた
あいつらは笑って
「もう、十分だろ?お前一人でどうにかならんよ」
『休んでください……後は任せてね』
なんていって送りだされた

……感謝するべきなんだろう
あのままだと、遅かれ早かれだった気がする
今のままじゃ夢も約束も果たせない
だから感謝するべきなんだろう……けど
あいつら私のエアカバー分どうするんだろう……どうしょもない事だけが頭によぎった
体はSD化されて布団の上から動けない



 (ねぇ?何故生きるの)
囁きが聞こえる、まただ、うごかないと内から声が聞える
簡単だ、約束もあるそれに……まだ何もなしていないから生きるのだ
答えて体をねじって立てかけていた刀に左手一本でにじり寄る

(約束破っても誰も貴方を見る人なんて「もう」いないし、どうせ「貴方には何もできやしない」よ?)
その通りだ、でもそれでも約束はある、願いはある
何もできなくてもこの手は動く、まだ生きている、まだ飛べる
問題はない……届かない物に手をのばしつづける事には慣れている

(その人達の顔さえ、誰だったかも思い出せないのに?貴方の本当の名前さえも思い出せないのに?)
……それが大事な人だって事はおぼえている……この胸に暖かい何かは残っている十分だろう?
それに……這い寄って伸ばした少年の指先が刀に触れる……まだ笑える
そうすれば思い出せるのだ、カンナを鷲神をねぇさんを忘れた皆を
それで十分だ

 声の主は微笑んでどこかに消える……私に自分を確認させて

 それが誰かはわからぬまま、少年は呟く
「航海中に体動くようにして……思い出してホルスにならないと……」
「生きなきゃ……示し続けなきゃ……男なら笑ってさ」
男なら例え自分が空っぽでも笑って示し続けるべきだ
少なくとも私に託した人たちはそうやって生きてきたのだから
刀を抱き込んで丸々少年から異音が聞える……
友が運び込んでくれた物の中には「軍用食料一式」なんて物もあった

これはAHIRUが航海に出てすぐ
部屋から出れなかった少年が体が動くようになり、それなりに思い出して「ホルスに不完全だがなれて」どうしようかと悩んでいたある日
始まりの前のお話である

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