【R-18】シュテルとシュルクは遭難した島で貴方たちと生活するようです【安価・あんこ】 - 長い前日談のミーディアム
自分、片羽は人造巫女だ。
代々巫女の家系で両親が死去したため生まれたときから巫女をしている。男だけど
そこら辺の疑問を村の人に伝えてみたことがある。いや待ってくれおかしいだろと
「なんで私は男の子なのに巫女さんなの?普通女の子がするんでしょ?
このスカートだって私以外の男の子は履いてないよ?」
「なーに言ってんだよ巫女様、そんなのなんとなく血筋で風習が続いてるからだろ」
「じゃあなんで人造なんてついてるの?私は普通に人の子だよ?」
「そんなの俺たち村民がなんかすごい神様に無事産まれるように祈ったからだろ
つまりお前を作ったのは神様でその大元は俺たち村民だから巫女様は俺達によって作られたんだぜ、感謝しろよ」
「そうなんだ!なんかすごいんだね私!」
「おうよ!だからちゃんと育ってすごい巫女になれよ!」
分かってもらえただろうか、この村はなんかすごい神様を信仰しているせいで少し変わっている
しかしその代わり村は平和の一言、穏やかに日々は流れていった
ある時を境に自分の心の中にある思いが浮上してきた、それは自分は下らない人間であるということだ
自分だからこそ自分の嫌な部分が分かる。でも他人には言えない、そんなちっぽけなプライドを守る自分は屑だの無限ループ。
「早く死ぬべきゴミなのは分かってるけど自分の命が惜しいな…やっぱり自分は屑だ」
『ちょっと巫女様聞いてるの!?うちの旦那ったらさあ…』
「惚気がまた始まったよ、ここは一応相談所という名目なんだがな」
『私がいなかったらどうせ散歩や狩りや強盗団壊滅や散歩や散歩でしょ、いいじゃないちょっとぐらいさ!』
「分かった分かったよ、それで旦那さんは一体何をしようとしたんだ?」
あの日の前日も普段通りの日だった
お悩み相談に来る人たちと他愛もない話をして、暇になったら街を散歩して狩りをする
そんな日常が続くと思っていた。いや、今からすると思いたかっただけなのかもしれない
村は滅んだ 村民は全滅 後には血まみれの死体のみ
女としての常識を教えてくれた先生も、未成年にやたらと酒を進めてくる酒場の主人も
とにかく野菜を押し付けてくる農家のおじさんも、毎回おまけしてくれた料理屋のおばさんも死んだ
「全員死んでしまった……自分一人を生かすために無残にも全員死んでしまったんだ
真っ先に死ぬべきは自分なのに、生きる価値すらない自分が生きてしまった
皆は自分を助けようとして死んでしまったから自分は死なない。自分が死ねば皆を否定することになる」
「生きていればきっといつか自分の死に場所が見つかるはずだ、だからそれまで生きよう
自分は今すぐ死ぬべき害悪だが村の皆の意思を蔑ろにはできない。だから生きよう
生きて生きて生きて……そして生きるという罪を重ね切った後で死んでやる」
こうして自分は生きるために箱舟に乗った
こうして自分は死ぬために箱舟に乗った
ここから先は未来の話で本編の話だ。絶対に村で生きた18年間を本編にはしない。
だからあの村で過ごした日々は長い前日談のお話だ。自分の人生の物語は幕を開けたばかりなんだから