【R-18】シュテルとシュルクは遭難した島で貴方たちと生活するようです【安価・あんこ】 - 光と影と影楼と 第一話
―――街の外れ、誰も寄り付かないようなところに幼い子供がいた―――

とても幼く、細い体をしていて…一目見て、亜人だとわかる身体をした子供だった。
その近くには親の姿どころか、人の姿すら見当たらない。

―――何故そのようなところに子供一人でいるのだろうか―――

…誰も知らない…彼女も知らない。…気が付けば、彼女は独りぼっちだった。
…彼女は何も覚えていなかった。気が付けばそこにいた。…親の存在も、しらない。

…ひとまず、彼女は街の中心へ行くことにした。
考えがあっていこうと思ったのだろうか?本能的に誰かに助けを求めたのだろうか?
…人の温もりが欲しかったのかもしれない。幼い彼女には、それが必要だっただろう…

しかし、街の中心についた彼女に対して人々は……

―――誰も、彼女を見ようとはしなかった―――

…面倒だから?…余裕がないから?…彼女が亜人だったから?
…どれも違った。確実に違う。どれも理由として当てはまらない…
胸を張って言えるだろう。人々がどんなに善人でも、彼女を見ようとはしなかっただろう……

―――何故なら、彼女は誰にも見えなかったのだから―――

…異能の中に、『影の加護』と呼ばれる異能がある。
光を曲げ、影を作り出し、姿を隠す異能。
その効果は大きく、異能を発動させれば影と一体化することが可能で、発見するのは困難となる。
彼女はその『影の加護』の異能を持っていた。
…本来なら異能者の意識でオン、オフが切り替えられるのだが…

―――幼い彼女に、『影の加護』を使いこなすことはできなかったのである―――

…そうして、彼女は彷徨った…残飯を拾い、泥水を飲み、様々な街を歩いて、歩いて、歩いて、歩いて…

…幸運なことに、『影の加護』により動物に襲われることも、盗賊に襲われることもなかった。何にも襲われなかった…
……しかし、それは幸運だったのだろうか…彼女は、独りぼっちで世界を彷徨ったのだから……



「……だれも、ボクをみてはいない…ボクは、ココにいるのに……」



…どれだけ彷徨ったのだろうか…街の片隅で、静かに彼女は座っていた。
……その目にの奥には光は無く、彼女は生きる意志を失っていた……



「…ボクは、どこにいるんだろう…ボクは、どこにいれるんだろう……」



―――彼女の居場所は、どこにもなかった―――



「―――お嬢ちゃん、そんなところで何をしているんだい?」



―――そう、『影』と出会うまでは―――


―――これは、彼女が『影』に拾われるまでの物語。彼女が『箱舟』に乗るのは…まだ、先の物語である……

光と影と影楼と 第一話 彼女が『影』と出会うまで