【R-18】シュテルとシュルクは遭難した島で貴方たちと生活するようです【安価・あんこ】 - とある主夫(執事)のプロローグ
「とある主夫(執事)のプロローグ」

「あんた、今日でクビね?」

「・・・・・・・・・・・・はい?」

俺はかつて日本と呼ばれていた国の、とある成金の家で執事を務めていた。
なんでもこの屋敷では執事ネームとかいうものがあるらしく、俺の場合、安藤竜という本名からアンドリュー。
どこの国の似非外人だよ。

「あの、もう一回言ってもらってもいいっすかお嬢。」

そして、目の前でふんぞり返って俺に足のマッサージをさせてるのが、現在俺が仕えてるお嬢様。
親しみと憎しみを込めてお嬢と呼んでいる。
やたらと色々無理難題を押し付けては、高笑いをしてその責任を俺に取らせる恐ろしい人。

「だから、あんたは今日でクビ。」
「荷物をまとめて、明日の朝までに屋敷を去りなさい。」

ほら、こんなふうに突拍子もない、こと、を・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・ん?

「・・・・・・・・・・・・・・・?」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

という訳で屋敷を首になりました。
どうしてこうなった・・・。



「畜生、理不尽だ。なぜ俺が・・・。」

そう、つぶやきながら夜の街を歩く。
このご時世、夜の街に活気なんてものはなく、魔獣の襲撃を恐れ、人々は戸を締める。
この時間帯に、こんなところを歩いてるやつなんて1人もいない。

「はあ、これからどうすっかなぁ。俺の腕力ステじゃ、雇ってくれるようなところないだろうし。」
「お嬢の知り合いも、お嬢が手を回してるだろうから働けないだろうし。」
「目つきも、態度も悪いし・・・。」

そもそも、あまりにも非力過ぎて就職に失敗したところを、お嬢の親父、つまりは旦那様に拾われたのだ。
今から雇い主なんて探す余裕なんて・・・。
そんなことをぶつくさ考えてると・・・。

「グルルルルルル」

「・・・・・・・・・・・・あっ。」

死んだな(確信)。
目の前にいるのは、一般的に小型魔獣と呼ばれる部類。
犬や猫など元々愛玩動物として可愛がられていた者達の変異した姿。
普通ならば、何も怯える必要は無い。腕力ステータスが10もあれば十分追い払える。

「・・・・・・・・・・・・だが俺の腕力ステータスは0だ!!」

そう、つまり目の前の小動物にさえ、抗うすべはない。
普段の生活は執事パワーや主夫パワーで乗り切っているが、戦闘において、それは使えない。
つまりゲームオーバー・・・!!

「グルァ!!!」

魔獣が飛びかかってくる。
俺を捨てやがった顔も知らない親父、お袋、先立つかどうかわからないけど、あんたらをぶん殴れないのが心残りです。
もし死んでたら地獄でぶちのめしてやるから覚悟しとけよ・・・!!
死を前にして、そんなどうでもいいことを考える。

「・・・・・・・・・・・・・・・?」

いつまでも痛みが襲って来ない。
正直そろそろ血しぶき上げて死んでる頃かと・・・。

「やあ、大丈夫かい?」

目の前にいたのは金髪の美青年。
不思議な形の剣を持ち、魔獣を一刀の元に切り捨てた。

「お兄ちゃん!早くしないと乗り遅れますよ!!」

「待ってよシュテル!君じゃ荷物もてないだろ!!それじゃ、君も気をつけて!」

そう言うと、その男は去っていった。
さり際に、何かがその男のポケットから落ちる。

「方舟・・・?」

どうやら広告のようだ。
話は聞いたことがある。
それに乗って、新天地を探すのだと。

「行ってみる価値はあるか・・・。乗れるか知んないけど1人くらい家庭的な奴がいた方がいいだろ。」

かくして、1人の何の力も持たない主夫(元執事)が、ノアの方舟に乗ることになる。
彼は何を得て、どう変わっていくのか。

乞うご期待。





「それで、アンドリューのやつは行ったのね?」

彼が追い出された屋敷の中で少女は執事長である目の前の男と会話する。

「はい、方舟に乗るところまで、しかと確認しました。」

この男は屋敷において執事長を務める男。
安藤の師匠でもある男だ。

「しかし、お嬢様、よろしかったのですか?本当のことを教えなくて。」

そう、老執事が問う。

「なに?今更何を教えるってのよ。」
「貴方は父と、とある女の不義の子で、目の前の仕えてる女は貴方の妹よって?」
「そんなこと、言えるわけないでしょ・・・。」

それに対しお嬢様と呼ばれた少女は、消え入りそうな声で呟く。
今まで、散々素直になれずにこき使ってきたのだ。今更そんなことを言えるはずもなかった。

「はぁ、やれやれ、お嬢様といい、アンドリューといい、やはりご兄妹ですなぁ。」

老執事はそう笑いながら、目の前の拗ねた主人の世話を焼くのだった。

ほんとに完!