【R-18】シュテルとシュルクは遭難した島で貴方たちと生活するようです【安価・あんこ】 - 1つの恋が終わる時
片羽だ、今日はいい月だったから海辺に散歩しに来たよ
少し昔の話でもするか、またかよと思うだろうけど大目に見てくれると助かる
『なんで君は男の子なのに女服なの?』
「それは私が人造巫女だからなんだ!」
『私にはよく分かんないや、それで君の名前は?』
「私は斎賀 片羽だよ、君は?」
『私は柏葉 見兎、よろしくね』
これが彼女との初めての出会いだった
6歳のころに親に捨てられたらしく村の外から突然やってきたんだ
親のいない自分と先生と3人で神社に暮らすようになったのはこの時から
村で唯一幼少の頃から自分を男扱いする人で自分は15までそのことに困惑してたな
あの頃の自分は心が完全に女だった、そのことはよかったのやらどうなのやら…閑話休題
『正座しなさい片羽、また狩りに出て怪我作ったんだって?』
「いや何のことだかさっぱりだな、自分は散歩してただけだよ」
『いいからさっさと座る!今救急箱持ってくるからじっとしててね!』
「分かったって…大人しく治療されるから機嫌を直してくれよ」
『まったく反省の色が見えないんだから…少しは自分を大切にしないと私泣くよ?』
普段から少し怒りっぽかったが無茶した時は相当怒られたな、まあ仕方のない事だけれど
家事が上手で細かい気配りもできる女だった、性格が少し強めなのが玉に瑕だがそこは愛嬌ということにしておくよ
『ねえ片羽』
「なんだ?」
『私さ、多分死んじゃうよねこれ』
「そうならないように今頑張ってるから諦めるなよ!」
『私が死んだら置いていきなよ、多少は時間稼ぎになるし荷物も減るでしょ』
「今度自分自身を荷物扱いしたら殴るぞ!いいから静かにしてろ!』
背負っている彼女の体から血がとめどなく溢れてくる
巫女として医学も勉強した自分には分かる、これは致死量で手遅れだ
『私が死んだらさ、私の事なんて忘れて幸せになってよ。
結局私は片羽の悩みを取れなかったけど今後も悩んだままでいる必要はないんだからね?』
「見兎のことを忘れてのうのうと生きていける訳…」
『ないよね、分かってる。だから次善策として提案があるんだけどいい?』
「………聞くだけ聞くよ」
『月が綺麗な夜には私を探して歩いてくれないかな?
ほら、片羽が趣味でやってる散歩のついででいいからさ』
「探したらまた会えるのか?」
『会えるわけないじゃんか、私これから死ぬんだよ?
多分あと1分も持たないから無理に決まってるって』
「分かった、それでも自分は探し続けるよ、約束する」
『うん、ありがとう
好きな人の背中で死ぬっていうのも案外悪くないかな…おやすみなさい』
勝手に言いたいことだけ言って死んでさ、残された方の身にもなってくれよ
おかげでこうして徘徊若人する羽目になってるじゃないか、約束がなくても徘徊してただろうけど
そうだ、見兎が死んで見兎から自分への恋は終わったんだろうけど自分から見兎への恋は終わってないよ
この片思いが終わる時は自分が死ぬ時だからそのつもりでよろしく